治療家による治療家のための情報誌
「FIND」−ファインド− 2007 8 N0、186 健康情報社 掲載記事
ライフ鍼・吸玉サロン 院長 宮本 繁
≪吸玉療法とは≫
皮膚に釣鐘型のガラスカップを当て、真空ポンプを用いてカップ内の空気を吸い上げ真空状態に近い状態を作り出します。
吸玉は内側から外側へと向かうこの吸引圧が特徴です。
吸引圧により吸着部分の血管を拡張させ、発痛物質、老廃物を流し、細胞に血液を行き渡らせる結果、物質代謝を促進させ細胞を活性化し生体の持つ機能を改善させます。
例えば、筋肉に起因するような肩こり、腰痛、筋肉痛、神経痛は勿論、内臓疾患、冷え性、高血圧、浮腫といった自律神経を主体とするような疾患、症状にまで効果を出す事が出来る療法です。
≪吸玉の歴史≫
きゅうかく、カッピング、抜罐(ばっかん)、火罐など様々な呼び名のある“吸玉療法”ですがその歴史は非常に深く、現在より五千年もの昔にさかのぼります。太古の昔、医学もなく薬もなかった時代に蛇など毒をもった虫に刺されたときや、おできなど化膿してしまった傷に対して、人々はどのようして対処していたでしょうか?
恐らく貝殻、先の尖った石等を用いて皮膚に傷をつけ毒や膿を口で吸出し、患部の状態を改善していったのだと思います。当時の人々は、皮膚に傷をつけ、「吸い出す」といった行動から疾患や疾病が改善の方向へ向かう事を経験していたのでしょう。ひるを用い、患部を吸わせる方法もその一つです。
時代の流れと共に人々は火を用い吸圧する事で「吸い出す」という事と同じ効果があり、より衛生的であるという事に気づきました。
そのための道具としてガラス製のもの、竹製ものも、陶器製などの道具が用いられるようになりました。これが現在の吸玉の原型となった物です。
吸玉療法は東洋のイメージが強いものですが、歴史的に最も古いのはヨーロッパであり、紀元前三千年位には行なわれていたという記録があります。
ルネッサンスの時代、ヨーロッパで医療と密接な関わりを持っていたのではないかと言われている大きな一族があり、その一族の紋章に丸薬とともに吸玉を配していると言う説もあるほど、吸玉と医療は古くから密接な関わりを持っていたのではないかと考えられています。
≪吸玉の効果≫
皮膚を吸玉で吸引する事で血流が促進され、以下のような効果を期待する事が出来ます。
@ 血液をきれいにする
A 血行をよくする
B 血管をはじめ組織を強化する
C 皮膚の若さを保つ
D 関節の動きを円滑にする
E 神経を正常に調整する
F 内臓諸器官を活発にする
・・・省略・・・
≪過去と現在の吸玉の利用法≫
吸玉療法には大きく分けて「湿角法」と「乾角法」という二つの方法がありました。
湿角法(瀉血法)とは、凝りなど症状のあるところに少し傷をつけ、血液を吸いだすという方法です。
この湿角法(瀉血法)は、その昔の日本でも用いられていたようですが、血液を出さなくとも同等の効果がある、血液中の栄養成分を出しては体に負担がかかる、感染症を引き起こす危険性がある、などということから血液を出さない現在の乾角法に変わっていきました。
また現在、日本では医師免許のない治療家、施術者が故意に皮膚に傷をつけ、出血させる行為は医師法に対して違反になるため、瀉血法(湿角法)は禁じられております。
近年、吸玉は更に新たな局面を迎えております。
乾角法などの方法は溢血斑という赤く丸い痕が残る場合も多く、夏場など薄着になる時や海水浴、浴場などで肌を露出する機会のあるときなど、特に女に対しての施術に難しさがありました。
しかし痕の付かない吸玉療法として注目されているのが皮膚にオイルを塗布し、カップを滑らせるという方法です。
カップについている穴の開閉により吸引の強弱をコントロールしながら滑らせる事のできるカップも開発されています。
吸引法の効果に大きな付加価値を加えた形で、美容業界においても注目されており、エステサロンなどでも用いられています。
吸玉は施術院で肩こり、腰痛などの治療として行なうという形を残しながら、美容という新しい世界でも発展を見せています。
これは吸玉の吸引圧という独特の効果が血管や神経、組織にもたらしている確かな効果の現われなのだと思います。
「FIND」−ファインド− 2007 8 N0、186 健康情報社